DeFiで年利20%は本当に安全か? — 利回りの裏に潜むリスクを全て暴く

はじめに — DeFi利回りの幻想と現実

DeFi(分散型金融)は、仲介者なしで金融サービスを利用できる革命的な技術です。しかし、2020〜2021年の「DeFiサマー」で見られた年利100%超の利回りは、多くの場合、トークンインフレによる一時的なものでした。持続不可能な利回りに釣られて資金を投入し、インパーマネントロスやトークン価格下落で損失を被った投資家は少なくありません。

2026年現在、DeFi市場は成熟期を迎えています。利回りは低下しましたが、その分、持続可能性と信頼性が向上しています。本稿では、主要なDeFiプロトコル — Aave、Compound、Lido — の実質的な利回りを徹底比較し、リスクとリターンのバランスを分析します。

Aave — レンディングの巨人

Aaveは、イーサリアムを中心に複数のチェーンで展開する最大手レンディングプロトコルです。2026年2月時点のTVLは約250億ドルで、DeFi全体の約15%を占めています。Aave V3のリリース以降、資本効率が大幅に向上し、クロスチェーン機能も強化されています。

主要資産の貸出利回り(供給APY)は以下の通りです。USDC: 3.5〜5.0%、USDT: 3.2〜4.8%、ETH: 1.5〜2.5%、WBTC: 0.3〜0.8%。これらの利回りは、借入需要に応じて変動します。市場が活況で借入需要が高いときには利回りが上昇し、市場が低迷すると低下します。

Aaveの実質利回りを評価する際に重要なのは、ガス代の考慮です。イーサリアムメインネットでの操作にはガス代がかかりますが、Arbitrum、Optimism、Base、Polygonなどの L2版Aaveを利用すればこのコストを大幅に削減できます。少額の投資家にとっては、L2版Aaveの利用が事実上必須です。

リスク面では、Aaveは最も実績のあるプロトコルのひとつです。数十回の監査を受けており、2020年のメインネットローンチ以来、重大なハッキング被害はありません。しかし、スマートコントラクトリスクはゼロではなく、担保清算のメカニズムに依存した不良債権リスクも存在します。実際に、特定のトークンの流動性枯渇により清算が正常に機能しなかった事例も過去にはありました。

Compound — シンプルさの美学

Compoundは、DeFiレンディングの草分け的存在です。2020年のCOMPトークン配布が「DeFiサマー」の引き金となったことでも知られています。Aaveと比較するとシンプルな設計を採用しており、機能の豊富さよりも安全性とシンプルさを重視しています。

Compound V3(Comet)では、各市場が単一の借入資産に特化する設計に変更されました。これにより、リスクの分離が明確になり、ひとつの市場で問題が発生しても他の市場への波及を防ぐことができます。

主要資産の供給APYは、USDC: 3.0〜4.5%、ETH: 1.0〜2.0%と、Aaveとほぼ同水準ですが、若干低い傾向があります。これは、Compoundの保守的な設計により借入利用率がAaveより低いためです。

Compound最大の強みは、その歴史とシンプルさです。複雑な機能を持たないため、スマートコントラクトの攻撃面が小さく、セキュリティリスクが低減されています。長期保有者が安心して資金を預けられるプロトコルとして、一定の支持を得ています。

2026年時点のTVLは約50億ドルで、Aaveの5分の1程度です。マルチチェーン展開もAaveに比べると限定的で、エコシステムの拡大ペースは緩やかです。

Lido — リキッドステーキングの覇者

Lidoは、イーサリアムのリキッドステーキングプロトコルです。ユーザーはETHをステーキングし、その代わりにstETHトークンを受け取ります。stETHはDeFiプロトコルで自由に利用できるため、ステーキング報酬を得ながらDeFiの利回りも追求する「二重取り」が可能です。

2026年2月時点のLidoのTVL は約400億ドルで、単一のDeFiプロトコルとしては最大です。ステーキングされたETHは約1,200万ETHに達し、イーサリアム全体のステーキング量の約30%を占めています。

LidoのステーキングAPYは現在約3.5〜4.0%です。この利回りはイーサリアムのコンセンサス層からの報酬とMEV(Maximal Extractable Value)報酬で構成されています。Lidoは報酬の10%を手数料として徴収するため、バリデーター全体の利回りが4.0%の場合、ユーザーの実質利回りは約3.6%となります。

stETHの活用方法は多岐にわたります。AaveやCompoundでstETHを担保にETHを借り、再度Lidoにステーキングする「レバレッジドステーキング」は人気の戦略です。この場合、レバレッジ倍率に応じて利回りが増幅されますが、ETH/stETHの価格乖離リスクや清算リスクも増大します。

Lidoの最大のリスクは、中央集権化への懸念です。イーサリアムのステーキング量の約30%を占めることは、ネットワークの分散性を損なう可能性があります。この問題に対処するため、Lido DAOは「分散型バリデーターテクノロジー(DVT)」の導入を進めています。

利回り戦略の比較

ここでは、100万円(約7,000ドル)を1年間運用するケースを想定して、各プロトコルの実質リターンを比較します。

戦略1: Aave USDC貸出(低リスク)
想定APY: 4.0%。年間リターン: 約280ドル(約4万円)。リスク: スマートコントラクトリスク、USDC deペグリスク。特徴: 価格変動リスクなし、安定した利回り。

戦略2: Lido ETHステーキング(中リスク)
想定APY: 3.8%。年間リターン: 約266ドル(約3.8万円)相当のETH + ETH価格変動。リスク: ETH価格変動、slashingリスク、stETH deペグリスク。特徴: ETHの値上がりも期待できるが、下落リスクも負う。

戦略3: レバレッジドステーキング(高リスク)
想定APY: 8〜12%(レバレッジ2〜3倍)。年間リターン: 約560〜840ドル(約8〜12万円)相当。リスク: 清算リスク、ETH急落リスク、複合的なスマートコントラクトリスク。特徴: 高利回りだが、ETH価格が一定割合下落すると清算される。

戦略4: Compound USDC貸出(最低リスク)
想定APY: 3.5%。年間リターン: 約245ドル(約3.5万円)。リスク: 最小限のスマートコントラクトリスク。特徴: 最もシンプルで安全だが、利回りも最低。

リスク評価フレームワーク

DeFiプロトコルのリスクを評価する際には、以下の要素を考慮すべきです。

スマートコントラクトリスク: 監査の回数と質、稼働期間、TVLの規模(大きいほどハッカーの標的になりやすいが、同時にセキュリティへの投資も大きい)。

経済的リスク: 清算メカニズムの堅牢性、オラクルの信頼性、市場急変時の耐性。

ガバナンスリスク: ガバナンスの分散度、マルチシグの構成、緊急時の対応能力。

規制リスク: 各国の規制動向がプロトコルに与える影響。特に米国のSEC規制はDeFiプロトコルの運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

2026年のDeFiトレンド

利回り環境は伝統的な金融市場の金利動向に大きく左右されます。米国の政策金利が低下すれば、相対的にDeFi利回りの魅力が増し、資金流入が加速するでしょう。逆に金利上昇局面では、リスクの低い国債等にDeFiから資金が流出する傾向があります。

また、RWA(Real World Assets)のトークン化が進むことで、DeFiプロトコルで国債やクレジット商品を運用できるようになりつつあります。AaveやCompoundもRWA関連の取り組みを進めており、DeFiと伝統的金融の境界は徐々に曖昧になっています。

まとめ

2026年のDeFi利回りは、2020〜2021年と比較すると地味に見えるかもしれません。しかし、持続可能で実質的な利回りという観点では、市場は大きく進歩しています。Aaveは機能の豊富さとマルチチェーン展開、Compoundはシンプルさと安全性、Lidoはリキッドステーキングの利便性と、それぞれ異なる価値を提供しています。投資家は自身のリスク許容度と投資期間に応じて、適切なプロトコルと戦略を選択することが重要です。高利回りを追求するあまり、リスクを見誤ることのないよう、冷静な判断を心がけましょう。

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