あなたの仮想通貨、来年から持てなくなるかも — 各国規制の最新動向まとめ

はじめに — 規制は敵か味方か

暗号資産業界において、規制は常に最大の論争テーマのひとつです。ビットコインの誕生理念は、政府や中央銀行の管理から自由な通貨の実現でした。しかし、市場が成長し、一般投資家や機関投資家が参入するにつれ、投資家保護やマネーロンダリング対策としての規制の必要性は無視できなくなっています。

2026年現在、各国の規制アプローチは大きく異なり、その差異が国際的な資金フローや事業者の拠点選択に大きな影響を与えています。本稿では、日本、米国、EUを中心に、世界の暗号資産規制の現状と市場への影響を網羅的に分析します。

米国 — SECとCFTCの縄張り争い

米国の暗号資産規制は、世界で最も複雑かつ影響力の大きいものです。最大の問題は、暗号資産を管轄する単一の規制機関が存在しないことです。SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)がそれぞれ管轄権を主張し、業界を混乱させてきました。

SECは、ほとんどのアルトコインを「証券」と見なし、証券法の適用を主張しています。2023〜2024年にかけて、BinanceやCoinbaseなど大手取引所に対する訴訟を提起しました。SECの見解では、トークンの販売がHoweyテストを満たす場合(投資家が利益を期待して共同事業に資金を投じる場合)、それは証券として登録が必要です。

一方、CFTCはビットコインとイーサリアムを「コモディティ(商品)」として管轄しており、デリバティブ取引の監督を行っています。SECとCFTCの管轄争いは、業界にとって大きな不確実性の要因となっています。

2025年後半から、議会レベルでの包括的な暗号資産規制法案の審議が本格化しました。FIT21(Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act)をベースとした法案が上下両院で議論されており、デジタル資産の分類基準や、SECとCFTCの管轄分担を明確化する方向性が示されています。

スポットBTC ETFの承認(2024年1月)とスポットETH ETFの承認(2024年5月)は、規制環境における大きな転換点でした。ETFの存在は、暗号資産を既存の金融システムに組み込む道を開き、機関投資家のアクセスを大幅に改善しました。

EU — MiCAによる包括的規制の先駆

EUは、MiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)の施行により、世界で初めて暗号資産の包括的な規制フレームワークを確立しました。2024年6月に一部施行、2024年12月に全面施行されたMiCAは、暗号資産サービスプロバイダー(CASP)に対するライセンス制度、ステーブルコインの発行規制、消費者保護要件を定めています。

MiCAの主な規定には以下が含まれます。CASPは、EU加盟国でライセンスを取得する必要があり、パスポーティング制度により全EU域内で事業を展開できます。ステーブルコインは「資産参照トークン」(ARTs)と「電子マネートークン」(EMTs)に分類され、発行者には準備金の保有や情報開示が義務付けられています。NFTは原則としてMiCAの適用外ですが、大量に発行されるコレクションは暗号資産として扱われる可能性があります。

MiCAの施行は、EU域内の暗号資産業界に大きな影響を与えました。ライセンス取得のコストと手間により、小規模事業者の撤退が相次ぐ一方、大手事業者は法的確実性の向上を歓迎しています。CircleのUSDCがMiCA準拠のステーブルコインとして先行し、EU市場でのシェアを拡大しています。

一方、TetherのUSDTはMiCAの要件を完全には満たしておらず、一部のEU取引所で取扱いが制限されています。これは、グローバルなステーブルコイン市場の勢力図に影響を与えつつあります。

日本 — 先進的な規制の光と影

日本は、2017年に世界で初めて暗号資産取引所の登録制度を導入した先進国です。金融庁の監督下で、顧客資産の分別管理、冷蔵ウォレットでの保管、定期的な報告義務などが課されています。2018年のCoincheck事件、2024年のDMMビットコイン事件を経て、規制はさらに強化されました。

日本の規制の特徴は、投資家保護の徹底です。取引所は顧客資産と自社資産を完全に分離し、暗号資産の大部分をコールドウォレットで保管する義務があります。万が一のハッキング被害に備えた弁済準備も求められています。これにより、FTXのような顧客資産の流用事件は、日本では構造的に起こりにくくなっています。

しかし、厳格な規制は同時に競争力の低下をもたらしています。取扱銘柄の審査プロセスが長く、海外取引所で人気のトークンが日本では何ヶ月も遅れて上場される、あるいは全く上場されないケースが多発しています。この「トークン上場問題」は、日本の暗号資産業界が長年抱える課題です。

税制面では、暗号資産の利益は「雑所得」として総合課税の対象であり、最高税率は55%(所得税45%+住民税10%)に達します。株式の分離課税(約20%)と比較して著しく不利であり、これが日本の投資家を海外取引所や海外移住に向かわせる大きな要因となっています。2025年から税制改革の議論が活発化しており、暗号資産への分離課税導入が検討されていますが、実現時期は不透明です。

アジアの規制動向

シンガポール: MAS(金融管理局)が暗号資産サービスプロバイダーへのライセンス制度を運用しています。規制は厳格ですが明確であり、多くのグローバル暗号資産企業がシンガポールを拠点としています。2024年以降、リテール投資家向けの規制が強化され、レバレッジ取引の制限やリスク警告の義務化が行われました。

香港: 2023年に暗号資産取引所のライセンス制度を導入し、一時はアジアのクリプトハブを目指す姿勢を見せました。しかし、ライセンス取得の条件が厳しく、実際に営業を開始した取引所は限定的です。それでも、中国本土で暗号資産が全面禁止されている状況下で、香港は中華圏の投資家にとって重要なアクセスポイントとなっています。

韓国: 2024年に施行された「仮想資産利用者保護法」により、取引所への規制が大幅に強化されました。不公正取引の禁止、顧客資産の保護、利息支払い義務などが定められています。韓国の暗号資産市場は世界有数の規模を誇り、規制の行方は市場に大きな影響を与えます。

中東・アフリカの台頭

UAEのドバイは、暗号資産フレンドリーな規制環境を武器に、多くのクリプト企業を誘致しています。VARA(Virtual Assets Regulatory Authority)が専門の規制機関として機能し、明確なライセンスフレームワークを提供しています。Binance、Bybit、OKXなどの大手取引所がドバイで正式にライセンスを取得しています。

エルサルバドルは2021年にビットコインを法定通貨とした世界初の国家ですが、実際の普及率は限定的です。一方で、ビットコイン保有による評価益は、同国の財政に一定の貢献をしています。

規制が市場に与える影響

規制と市場の関係は単純ではありません。短期的には、規制強化のニュースはネガティブに受け止められ、価格下落を招くことがあります。しかし、長期的には、明確な規制フレームワークの存在が機関投資家の参入を促し、市場の成長を支えます。

スポットBTC ETFの承認は、その好例です。SECが長年にわたって拒否し続けた末に承認が実現した際、BTCの価格は大幅に上昇し、数百億ドルの新規資金が市場に流入しました。規制の明確化が、結果的に市場の拡大をもたらしたのです。

事業者にとっては、規制アービトラージ(規制の緩い国に拠点を移す戦略)が依然として行われていますが、各国の規制が整備されるにつれ、その余地は狭まっています。グローバルに事業を展開するためには、複数の国でライセンスを取得するマルチジュリスディクション戦略が不可欠になっています。

今後の規制動向予測

2026年以降の規制動向として、以下のトレンドが予想されます。第一に、米国での包括的な暗号資産規制法の成立です。FIT21をベースとした法案が2026年中に成立する可能性が高まっています。第二に、DeFi規制の本格化です。これまで規制の空白地帯とされてきたDeFiプロトコルに対して、各国が規制の手を伸ばし始めています。第三に、国際的な規制協調の進展です。FATF(金融活動作業部会)のガイドラインに基づき、各国の規制の調和が進むでしょう。

まとめ

暗号資産規制の世界地図は、2026年現在、かつてないスピードで塗り替えられています。米国の法整備、EUのMiCA、日本の税制改革、ドバイの誘致戦略 — 各国のアプローチは異なりますが、共通しているのは「暗号資産を無視できなくなった」という認識です。投資家としては、規制動向を常にウォッチし、自身の投資戦略への影響を評価し続けることが重要です。規制は障壁ではなく、市場の成熟と持続的成長のための基盤です。

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