はじめに — クリプトバブルが生んだ新しい金持ち
ビットコインの急騰、アルトコインの百倍、DeFiのエアドロップ — 暗号資産市場は、従来の金融市場では考えられないスピードで「億り人」を生み出してきました。2021年のバブル期には、20代で含み益が数億円に達した人間が続出し、SNS上では高級時計やタワーマンション、そして派手な夜遊びの報告が溢れました。
しかし、その華やかな世界の裏側には、急激な資産増加がもたらす人間関係の歪みや、夜の世界で繰り広げられる金銭感覚の麻痺が存在します。本稿では、仮想通貨で財を成した人々の夜遊び事情をリアルに掘り下げます。取材に応じてくれた複数の「クリプト長者」の証言を元に、彼らの実態に迫ります。
六本木から西麻布へ — クリプト長者の棲息地
2021年のバブル期、クリプト長者たちが最も集まった場所は六本木でした。しかし、2024年以降は西麻布や恵比寿に活動拠点が移行しています。理由は明確で、六本木はあまりにも「ギラギラした成金」のイメージが強くなりすぎたためです。
Aさん(30代、DeFiプロトコル創業者、推定資産5億円)は語ります。「六本木のラウンジに行くと、IT社長やYouTuberと同列に見られるんですよ。別にそれが悪いわけじゃないけど、クリプトの話ができる相手はほとんどいない。だから自然と、同じクリプト仲間が集まる西麻布の会員制バーに通うようになりました」。
西麻布の特定のバーやラウンジでは、「クリプト枠」と呼ばれる暗黙の常連グループが形成されています。彼らは週末になると集まり、最新のプロジェクトの話をしながらシャンパンを開けます。一晩の飲み代は一人あたり10万〜30万円が「普通」だといいます。
高級クラブでの散財 — 一晩100万円の世界
クリプト長者の中でも特に派手な層は、銀座の高級クラブや西麻布の会員制ラウンジを活動拠点としています。一晩の支出が100万円を超えることも珍しくありません。
Bさん(20代後半、2021年のアルトコインバブルで3億円の利益)は当時を振り返ります。「含み益が3億を超えたあたりから、金銭感覚が完全にバグりました。銀座のクラブで一晩50万使っても、ポートフォリオが一日で1,000万動く世界にいると、大した金額に思えなくなるんです。シャンパンタワーを注文して、隣のテーブルの客に奢る。そうすると店の女の子の態度が明らかに変わる。その瞬間の万能感がたまらなかった」。
しかし、Bさんの話には続きがあります。「2022年の暴落で含み益の80%が消えました。当然、クラブに行く頻度も減った。すると、あれだけ親しくしていた女の子から連絡が来なくなった。残酷ですけど、それが現実です。金の切れ目が縁の切れ目。夜の世界では特にそれが露骨です」。
マッチングアプリと仮想通貨 — 「職業:投資家」の威力
夜の街だけでなく、マッチングアプリでもクリプト長者の存在感は大きいです。プロフィールに「投資家」「会社経営」と記載し、タワーマンションや高級車の写真を載せることで、マッチング率が飛躍的に向上するといいます。
Cさん(30代前半、NFTトレーダー、ピーク時の資産2億円)は興味深い分析を語ります。「マッチングアプリでは、年収が一定ラインを超えるとマッチ率が指数関数的に上がります。でも、重要なのは『何で稼いでいるか』なんです。不動産や医者は安定感がある。でも仮想通貨トレーダーは、良くも悪くも『ヤバい人』というイメージがある。それが逆に好奇心を刺激するらしく、アプリでのメッセージ返信率は非常に高かったですね」。
ただし、関係が深まるにつれて問題も生じます。「含み益」は実現益ではなく、市場の急変で大幅に減少する可能性があります。パートナーに見せていたリッチなライフスタイルが維持できなくなった時、関係が崩壊するケースは少なくありません。
クリプト長者同士の合コン事情
興味深いのは、クリプト長者同士のコミュニティ内での出会いです。Telegramの大口投資家限定グループやDiscordのクローズドコミュニティでは、定期的にオフ会が開催されています。これらのオフ会には女性参加者も増えており、独自の「恋愛市場」が形成されています。
Dさん(20代、DeFiアナリスト)は語ります。「クリプト系のオフ会は独特の空気があります。参加者の多くが20代〜30代で、従来の金融エリートとは雰囲気が全然違う。パーカーにスニーカーで来るのに、ウォレットには数億入っている。そのギャップに惹かれる女性は確かにいます」。
しかし、こうしたコミュニティ内の恋愛にはリスクもあります。「ウォレットの残高を見せ合うような関係では、市場が崩壊した時に一緒に崩壊する。精神的に不安定になった時に支え合える関係かどうかは、クリプトの世界では特に重要です」とDさんは付け加えます。
キャバクラ嬢が見たクリプト長者の実態
高級キャバクラで働くEさん(20代後半、銀座の高級店で5年の経験)は、クリプト長者の特徴をこう分析します。
「仮想通貨で儲けたお客さんは、お金の使い方が独特です。不動産や医療系のお客さんは、金額に対してシビアで、コスパを重視する人が多い。でもクリプトのお客さんは、『今日のポートフォリオがプラスだから』という理由で急にシャンパンを入れたりする。逆に、市場が下がっている日は来店すらしない。感情と支出が市場に完全に連動しているんです」。
「あと、お金の話をすごくオープンにしますね。普通のお客さんは年収の話は避けるのに、クリプトのお客さんは含み益の話を自分からする。ウォレットの画面を見せてくる人もいます。承認欲求が強いというか、自分の成功を誰かに認めてほしいんだと思います」。
Eさんはさらに続けます。「正直、太客になる可能性はありますが、安定感はないです。今月100万使ってくれた人が、来月は来なくなる。それがクリプトのお客さん。お店としては嬉しいけど、個人的には少し不安になりますね」。
含み益1億円が人間関係にもたらす変化
資産の急増は、恋愛関係だけでなく、友人関係や家族関係にも大きな影響を及ぼします。
Fさん(30代、ビットコイン初期投資家、含み益約8億円)は語ります。「含み益が1億を超えたあたりから、古い友人との関係が変わりました。飲みに行っても、全額出すのが当たり前みたいな空気になる。最初は気にしなかったけど、だんだん『ATM扱いされてる?』と感じるようになった。結局、新しい友人はほとんどクリプト仲間になりました。同じレベルの資産がある人同士なら、奢る奢られるのストレスがない」。
異性関係についてFさんはこう続けます。「彼女ができても、相手が自分に興味があるのか、お金に興味があるのか、常に疑念がつきまとう。これは資産家共通の悩みかもしれませんが、クリプトの場合は資産が急に増えたから余計に混乱するんです。昨日まで普通の会社員だった自分が、今日は億万長者。自分自身のアイデンティティが追いつかない」。
暴落後の現実 — バブルの宴のあとに
2022年の暴落、2024年の調整局面を経て、多くのクリプト長者が「現実」に直面しました。含み益は幻のようなものであり、利確しない限り確定した資産ではありません。派手なライフスタイルを続けるために利確し、税金の支払いに苦しむケースも散見されます。
日本の暗号資産の税率は最大55%(所得税45%+住民税10%)です。1億円の利益を確定させると、約5,500万円を税金として納める必要があります。夜遊びで散財した分を差し引くと、手元に残る金額は想像以上に少なくなります。
「夜の世界で学んだのは、お金で得られる関係には賞味期限があるということ」とBさんは振り返ります。「本当に大切なのは、ポートフォリオがゼロになっても付き合ってくれる人間関係。それに気づくのに3億円かかりました」。
まとめ — 金が変えるもの、変えないもの
仮想通貨長者の夜遊び事情は、急激な資産増加がもたらす人間心理の変化を映し出す鏡です。金銭感覚の麻痺、承認欲求の暴走、人間関係の歪み — これらは暗号資産に限らず、あらゆる急激な成功に伴う普遍的な問題です。
しかし、暗号資産市場の特殊性 — 24時間365日動き続ける市場、ボラティリティの高さ、若年層の比率の高さ — は、これらの問題をより先鋭化させています。含み益1億円の興奮と、一夜にして資産が半減する恐怖の間で、冷静でいられる人間はほとんどいません。
夜遊びは自由です。しかし、市場のサイクルは必ず終わりを迎えます。宴の最中にこそ、冷静な資産管理と、お金に依存しない人間関係の構築を心がけるべきでしょう。


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